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本日休演という深淵をのぞく時、彼らもまたこちらをのぞいている。闇鍋は凡ゆる業を綯交ぜに煮え滾っている。
或いはまれびとと交信する軽音楽の実践的研究、冗談とも本気ともつかない。
なんたって連中は何もかもを試さずにはいられないのだ。彼岸に往けるもの、そして此岸に懊悩するすべての青春に幸あれ!
祝 2010年代後半の日本のロック名盤誕生。
実に新鮮!はっぴいえんどラインとは別の日本の古き良きロックのテイストと、そこにとどまらないチャレンジかつフレシュなアイデアの数々。
これほどまでに屈託のなく、ナチュラルな変態ロックは聴いたことがない。こんなにも変態かつ、ドープなのに、どうして、こんなにも胸がキュンとするのだろう。
とにかく聴いて欲しい。
個人的なオススメは、
「ラブエスケープ」のomsbがラップするバックの演奏
「ヨアケ」のサビの部分の「あああああー」凡人には到底真似できないセンス、アプローチ。
そこには、彼らの情熱、モラトリアム期間、そして青春が全て注ぎ込まれている。
大傑作盤
大大大推薦
僕はどんな音楽か簡単に言えない音楽が凄く好きだ。このアルバムを終盤まで聞いていて、「それにしても本当にどんな音楽か言えない、物凄い」と思っていたところで最後のダンスダンスダンスが来た。
聴き始めてすぐに、この曲は過去に一度だけ対バンしてもらったとき、亡くなった埜口君が歌っていた曲だと分かった。アルバムの他の曲より明らかに分かりやすいフォーマットだし、岩出くんはキーがあっていないのか他の曲より苦しそうだ。
僕は普段、実際に起きたことと音楽の関連を全然考えないし、むしろ考えないようにしているし、もっといえば関連させて語るのが好きじゃないが、埜口くんのラインを絶叫して歌う岩出くんのボーカルを聴いていて不覚にも泣きそうになってしまった。これがなくても名盤だったけど、得体の知れない彼らが全てをさらけ出すようなこの曲があることで、より特別な盤になっていると感じた。
と、ここまで書いておくったら、岩出くんから「ダンスダンスダンスは埜口が歌ったライブ音源をそのまま使ってます。ライブ音源で音程外しまくってるけどエモーショナルで良かったから使いました」と返信が。
僕の感想は思いっきり間違っていて恥ずかしいが、直すのもそれはそれで恥ずかしいので追記させてもらう。僕が見た本日休演は二人も最高のボーカリストがいた最高のバンドだった。次に対バンしてもらうときは、その当時一時的に抜けていた拓郎君(この前京都で飲んですっかり仲良し)が復帰した新しいバンドになっている。長く付き合って欲しい。
時々聴くことができる懐かしいメロディと言葉。それとは裏腹に聴くものを遠ざけんとするようなしなやかなリズム隊と絡まりあったギター。そこに不思議な鍵盤楽器が鳴る。
もうジャンルは飛び越えて意味を失う。しかしそこにいつも見えるのは厭世的な優しい弱者の目線。彼らとは去年突然に出会った。そして3時間もしないでいっしょに演奏した。
その時の気負いのない、しかし自らを捨てるようなことのない姿勢がとても印象的だった。年の離れたわたしをジジイ扱いしなかったのもうれしかった。この新作を聴くとそんな彼等が伸び伸びと飛び跳ねている。羨ましいね。
ここはどこなのか。東京や大阪、電車横切る下町?山の麓の街や左京区?ニューヨークの交差点のど真ん中?タイの夜店マーケット?アフリカの広すぎる空を見上げる荒野?はたまた存在しない夢の中のユートピア?
そこに投げ出された僕らがわかるのは、そこが「知らない街」という事だけだろう。行く人も去る人も、誰も知らない。好きなあの子にも変なアイツにも、今日はなんか会えない。
そんな日に本日休演の”アイラブユー”は知らない街を共に歩くのに良き友達になってくれることだろう。
寝ぼけて遅めに目覚め、ずっと一緒の友達の事は近すぎてよく分からないし、真昼間にほっつき歩いてもいつもの街に飽きて色々考えてるうちに変な喪失感で一喜一憂し、さまよってるうちに街が滲んで夜になってく期待で秘密の扉と共に夢が開き、夜明けを迎えるセンチな身体を抱えて結局は知らない街に立ち尽くしている。
忘れられない別れを思い出すけど、今はとりあえず踊りたいんだ。ずっと知ってるようで何も知らなかったきみと。
そんなスローモーション・シティ・サウンドトラックだ。この一枚は。
本日休演の5人が”アイラブユー”っておまじないをかけている間はどこにだってエスケープできる。今はそんな気がしてる。